アガサ・クリスティー（ハヤカワ・ミステリ文庫）
スタイルズ荘の怪事件		ゴルフ場殺人事件
	戦傷を癒そうと、旧友カヴェンディッシュの母カミリイの邸＜スタイルズ荘＞を訪れたヘイスティングズは、到着早々事件に巻き込まれた。 二十も下の男と再婚したばかりのエミリイがストリキニーネで毒殺されたのだ。 困惑するヘイスティングズの胸にある男の姿が浮かんだ。 卵型の頭と見事な口髭が印象的な小男──ベルギーから亡命し、エミリイのおかげで近くに居を構えたエルキュール・ポアロだ。 かくしてポアロは恩人毒殺の謎を解くべく、自慢の”灰色の脳細胞”を駆使しはじめた…… 不朽の名探偵ポアロの出発点となった女史の記念すべき処女作！ （S61/12/31 第9刷）		フランス滞在中の富豪ルノールからの手紙を読んだポアロは表情が一変した。 助けを求めるその文面にただならぬものを感じたのだ。 彼はルノール邸に急行するが、待っていたのは富豪の死体だった。 近くのゴルフ場の何者かに刺殺されたらしい。 犯行現場では名探偵の呼び声高いパリ警察のジロー刑事が捜査を開始していた。 こうして英仏の名探偵が犯人探しに火花を散らす中で、身許不明の乞食が殺される事件が起った。 しかも凶器はルノール殺しと同じナイフなのだ！ ──富豪と乞食、何の関係もなさそうな二人を結びつけるものは？ ポアロ登場第二作 （S61/01/31 第8刷）
アクロイド殺し		ビッグ４
	キングズ・アボット村の名士、ロジャー・アクロイドが殺害された── 自邸の書斎で肘掛け椅子に寛いでいるところを、背中から一刺しで。 アクロイド家の執事でさえも気づかない巧妙な事件だった。 警察も犯行の動機、目的、手掛りなどいっさい掴めず、事件は迷宮入りの観を呈しはじめてさえいた。 そんな時、たまたまこの村に引越し、カボチャ作りに勤しんでいた灰色の脳細胞ポアロが敢然と立ちあがる。 村の医師シェパードが残した手記の形で綴られ、読者の間にそのトリックに関してフェアかアンフェアかの論争を巻き起こした名作、改訳決定版！ （S61/12/31 第13刷）		ポアロの家に突然倒れ込んできた英国情報部員は、口もきけずにうわの空で数字の４を書き散らすばかり── 謎の国際犯罪組織＜ビッグ４＞と名探偵の対決はこうして幕を開けた。 世界制覇の野望を挫こうと、灰色の脳細胞をフル回転させて必死で追跡するポアロに対し、常に先手を打って証人を抹殺し、正体を現さない悪事の天才４人── 死闘はイギリスからフランスに舞台を移し、ついには友人ヘイスティングズの目の前で、ポアロの命さえ…… 波瀾万丈の展開の末、イタリア山中で迎えた意想外の結末とは？ 謎解きと冒険の魅力に満ちた初期の意欲作。 （S61/11/15 第4刷）
青列車の秘密		邪悪の家
	リヴィエラ行きの豪華列車＜青列車＞で陰惨な事件が起った。 大富豪令嬢ルスが、客室内で顔面を殴られ絞殺されたうえ、高価なルビーを盗まれたのだ。 ロシア女帝の冠を飾ったといういわくつきの代物だ。 警察は列車に乗り合わせたポアロに調査を依頼する一方、恋人と青列車に乗っていたルスの夫を逮捕した。 彼は必至の弁明に努めるが、妻の客室にはいるのを目撃された事実はいかんともしがたい。 再び忌まわしき青列車に乗り込んだポアロが指摘した意外な犯人とは？ 『オリエント急行の殺人』と並び、ポアロが列車内の純粋推理を展開する初期の意欲作！ （S62/02/15 第8刷）		ニックが狙われたのは四度目だった。 最初は寝台上の大きな額が落ち、次は車のブレーキが壊れ、続いて崖の上から岩が転がり落ちてきたという。 そして今度は知り合ったばかりのポアロの目前で、何者かに狙撃されたのだ。 古びた邸の若い女主人でさしたる財産もないニックがんなぜ襲われるのか？ さしもの名探偵も解決の糸口がつかめない。 そのうち、人違いか、パーティの最中にニックの従妹マギーが射殺されてしまった。 執拗にニックをつけ狙う謎の人物の動機、そして、大団円に待ち受ける驚くべき逆転とは？ 女史初期の作品群を代表する本格傑作！ （S61/12/31 第7刷）
エッジウェア卿の死		オリエント急行の殺人
	その夜のカーロッタ・アダムズの舞台はすばらしかった。 とくに圧巻だったのは人気女優ジェーン・ウイルキンスンの物真似──ポアロもヘイスティングズもその演技にはすっかり魅了された。 ジェーン・ウイルキンスン、現エッジウェア男爵夫人。 結婚で舞台生活を閉じながら、ゴシップには事欠かず、舞台に舞いもどった女──奇しくもその彼女がポアロに依頼をもちこんだ。 夫と手を切りたいのだが、離婚をこばむ男爵を説得してほしいという。 ポアロは純粋に心理学的興味から承諾した。 だが数日後、当の男爵は何者かの手で惨殺されてしまった！ （S62/02/15 第11刷）		三日間のヨーロッパ横断の旅にのぼったオリエント急行は、厳寒の季節には似合わず、いつになく混んでいた。 列車はユーゴスラヴィアの山中で大雪のため立往生し、その鍵のかかった車室で、一人のアメリカ人が死んだ。 他殺の疑いが濃かった。 満身に12カ所もの刺し傷をうけていたのだ。 密室状況の豪華な列車内で起った奇妙な事件に、乗り合わせたエルキュール・ポアロが捜査を開始する。 しかし車輛の乗客には、すべて堅固なアリバイが…… 息もつかせぬ鮮烈なポアロの推理と、その大胆なトリックが与える強烈な衝撃。 ついに待望の改訳なる！ （S61/09/30 第19刷）
三幕の殺人		雲をつかむ死
	引退した俳優チャールズ・カートライトの自宅でのパーティの席上、善良な老牧師がマティーニを口にしたとたん苦しみだし、死亡した。 数カ月後、今度はチャールズの友人の医師が、自宅で催したパーティの最中に、ポートワインを飲んで死んだ。 出席者も、死の状況もまったく同じだった。 捜査の結果、二人とも毒殺であることが判明した。 だが、犯人はどのようにして、大勢の中で、狙った人物に毒入りのグラスをとらせることができたのか？ 二つの死にはどのような関係が？ ポアロは、大胆な仮説を組み立てた…… ミステリの女王の中期の代表傑作 （1988/12/15 第1刷）		ロンドンのクロイドン空港へ向う定期便プロミシューズ号がパリのル・ブールジェを飛び立った。 乗客は30数名。 探偵作家や考古学者、伯爵夫人などに混り、後部客室にはエルキュール・ポアロの姿も見えた。 英仏海峡にさしかかった時、突如機内に、黄蜂が飛びまわりはじめた。 乗客の一人が黄蜂を殺し、機内は再び静かになったが、最後部席の婦人の息は、すでに途絶えていた。 首には一つ、黄蜂の毒針で刺された跡が……。 大空の旅客機という完全な密室で起った異様な事件に、居合せたポアロが調査を開始する！ 殺人動機の謎とアリバイ崩しの名篇。 （S62/04/30 第15刷）
ＡＢＣ殺人事件		メソポタミヤの殺人
	今月の二十一日、アンドーヴァを警戒されたし── ポアロのもとに送られてきた挑戦状の予告どおり、殺人は起こった。 煙草屋を営むアッシャーという、Ａの頭文字の老婆が撲殺されたのだ。 つづいて第二、第三の挑戦状が届き、ベクスヒルでＢの頭文字の娘が、チャーストンでＣの頭文字の初老の紳士が、殺された。 しかも、現場には必ずＡＢＣ鉄道案内が残されていた。 アルファベット順に殺人を繰り返す犯人の意図は何か？ また、鉄道案内の意味するものは？ ポアロは懸命に、犯人の心の輪郭をつかもうとするが…… ミステリの女王全盛期の代表作。 （S62/02/28 第1刷）		ルイズの初めての結婚は悲惨を極めた。 その思い出から逃れようと、考古学者レイドナー博士と結婚した彼女のもとに、殺された先夫からとしか思えない奇怪な脅迫状が舞いこみはじめた。 そして古代アッシリアの古蹟のため、夫とともにイラクへ渡ったルイズを追いかけて、ついには死を予告する不吉な手紙がきたのだ。 こうして、ポアロが”幻想的な犯罪”と称したこの不可思議な殺人の幕は切っておとされた。 殺人鬼の悪魔の知恵とポアロの灰色の脳細胞とはすさまじい緊張のうちにあい対した！ 中東を舞台にした作品中の最高傑作！ （S61/11/15 第25刷）
ひらいたトランプ		もの言えぬ証人
	”生きた犯罪コレクションを見せましょう”シャイタナ氏の奇妙な申し出はポアロの興味を惹いた。 殺人を犯しながら、告発されないでいる人間たちを集めるというのだ。 ──不気味なパーティは何事もなく進んだ。 食後、シャイタナ氏を除く八人の出席者は二組に分かれてブリッジに熱中した。 しかし、ゲームが一段落した時、客まではシャイタナ氏の刺殺死体が発見された！ ブリッジの点数表を通して殺人者の心理を読み、真犯人を追いつめる ──エルキュール・ポアロの純粋推理が冴える！ クリスティー中期の名作。 （S61/12/31 第34刷）		70歳を越した老嬢エミリイが死んで、巨額の遺産の全部が、大勢の親族をさしおき、一介の家政婦に贈られた。 彼女の死から二カ月ほどたったある日ね一通の手紙がエルキュール・ポアロのもとに届いた。 差出人はエミリイ。 彼女の死の半月以上も前に係れたものだった。 しかもそこには、彼女自身がやがて殺させることを予感するかのような内容が……。 老嬢の死と手紙との不思議な暗合に興味を抱いたポアロは、調査に乗り出したが関係者は虚偽の証言しかしない。 難事件に苦吟するポアロ。 彼を見つめる、もの言えぬ証人、白いテリアの秘密とは？ （S61/12/31 第23刷）
ナイルに死す
	ナイル河上には、そもそもの始めから暗雲がたれこめていた。 社交界の花形であり財産家でもあるリネットと失業中のサイモンのハネムーンは誰からも祝福されたものとはいえなかったのだ。 とりわけ婚約者を奪われたジャクリーンにとってはそうだった。 彼女は拳銃を片手に、二人の行く先々に現われ、脅迫まがいのいやがらせをした。 同じ観光船に乗り合せたポアロはそんな彼女のふるまいにを押しとどめようと試みたが…… やがて、恐るべき惨劇は起った！ ポアロの名推理があばき出す意外きわまる真相。 ロマンとミステリを鮮やかに結合する最高傑作！ （S61/09/30 第5刷）